受賞歴も多く映画化もされている地味(失礼)なヒットメーカー「さそうあきら」による作者得意の音楽モノです。
5巻完結なのでさらっと軽く読んでもいいのですが…まあまあマニアックな話なのでじっくり読み込むと新たな世界に興味が湧いてしまうかも。個人的にはふと読み返したくなる一冊ですね。
・学園モノ、特にハチクロやのだめなど芸大モノが好きならドンピシャ!?
・全ての音楽好き、クラブミュージック好きには特におすすめ
・京都が好きな人、住んでた人
・kindle unlimitedで手頃な漫画が読みたい人
あらすじ
さえない感じの主人公サクが芸大に入学して成長するという学園青春ストーリーです。
芸大には美術というか映像系で入るのですが、強引な先輩によってどんどん現代音楽研究会に取り込まれていくサク。そして、実は音楽家系に育ちながら音楽を取り上げられて育ったサクは兄へのコンプレックスや偉大な父の重圧から開放される自分の「音楽」に出会うことになるのです。
舞台となるのは京都芸術大学
学校を舞台とした青春が繰り広げられるとはいっても、そこはやっぱりさそうあきらの空気感、京都が舞台ということもあり作者ならではのしっとりとした湿度が感じられます。漂う関西感は大阪芸大出身の中島らもの小説やエッセイに近いかも。京都の町並みとそこに付随する音の描写は思わず「そうだ、京都行こう」と呟いてしまうほど魅力的で、私も京都を訪れた際ミュジコフィリアの世界観を思い描きながら錦や南禅寺を彷徨いた経験があります。
時間とお金に余裕ができたらいつかは本格的な聖地巡礼をやりたいと思ってるのですが…コロナが何とかなってくれるといいですね。ちなみに本書の注釈にもあるとおり京都芸術大学というのは作中の架空の大学。そして度々ページの下に現れるこの注釈は現代音楽というマニアックな世界を知るために欠かせないものとなっていくのです。
現代音楽というジャンル
ほとんどの人はあまり馴染みのないテーマなのではないでしょうか。私は幼少期にピアノを習っていたこともあるしそこそこ音楽を嗜む方なのですが現代音楽には詳しくありません。前衛的で分かりにくい、いわゆるポップスと対極にある…漠然としたイメージはそんな感じですかね。
そんな難解な(イメージがある)現代音楽ですが、本書はその知識がなくても全然問題なし、それどころか読んでいるうちにだんだんと現代音楽について詳しくなっていきます。新たな知見を広げてくれるというのも本書の、というよりも漫画の魅力ですよね。そしてミュジコフィリアでは作中に実在の音楽家およびその楽曲が登場するという手法がとられており、4巻において現代音楽研究会のみんなで参加する秋吉台のセミナーやその特別講師の湯浅先生はどちらも実在するもの。描写の細部にはリアリティがありながら、どこか虚構感のあるこの世界観はこうした作品の構造が生み出しているのかもしれないですね。
ちなみに現代音楽で私が思い浮かべることができるのはスティーブ・ライヒただ一人。ライヒに影響を受けたと語るサクライケンタがプロデュースしているMaison book girlあたりから現代音楽のさわりを感じてみてはいかがでしょうか。やや強引に好きなグループを紹介してますが…おすすめです。
登場人物のクセ
名作において不可欠なのが魅力的な登場人物。芸大モノなので変人が空気のように自然に現れます。芸術の中でも特に尖っている現代音楽ですから大クセです。そして漫画なので才能に溢れた人物も多いです。でも、微妙に居そうなんですよね。設定の妙というのか、現代音楽をやってるという時点でだいぶ普通とはかけ離れている人物なわけで、そう考えるとこちらも懐が深くなっちゃって「変だけど芸大ならこんなもんかな」なんて思ってしまうんですよね。キャラクター的な味付けが少なくて人間くさいところも良いです。
何かをしたくなるロッキーのような作品
ロッキーを見たあとってシャドーボクシングとかしちゃいますよね、あと生卵を一気飲みしたり。そんなノリでミュジコフィリアを読んだあとは音楽を聴きたくなったり、楽器じゃなくても何かで単純に音を鳴らしたくなったり、はたまた京都に行きたくなったりと影響を受けちゃう作品なんですよ、まあそんな単細胞は私だけかもしれませんが。
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